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営業秘密110番アドバイザーのコラム

 ここでは、当館の知財戦略アドバイザーが、日々の相談業務の中で感じたことや考えていることから、営業秘密を管理・活用するうえで皆様のお役に立つようなちょっとした豆知識等を紹介していきます。

※本コラムの内容は執筆者個人の意見を表すものであり、当館の見解を示すものではありません。

第一回 はじめに/小原アドバイザー

フーテン?のアドバイザー

 工業所有権情報・研修館(INPIT)に営業秘密・知財戦略相談窓口(通称:”営業秘密110番”)が、サービスを開始してから、おかげさまで2月で二周年を迎えます。私たちINPIT知的財産戦略アドバイザーは、2015年2月のサービス開始以来、3名体制で全国各地の様々な団体が主催する知財セミナーの講師、電話などによる個別相談対応、および企業様をご訪問しての営業秘密管理体制構築のお手伝いなどを主な業務としています。

 スーツケースを引っ張り九州の小さな連絡船で移動中のスナップを知人に送ったところ「お前の仕事は、車寅次郎みたいだな」と言われました。たしかに、各地の集会で口上を述べ、中小企業のオヤジさんたちの悩みを聞くのが私たちの仕事の中心ですから、寅さんとの共通点があるかもしれません。

 たまに「小原先生」などと、声をかけられ戸惑うときがあります。寅さんが、旅先で、教養ある知識人と勘違いされ「車先生」などと呼ばれるシーンが、映画にもありました。各地で様々な人たちと触れ合い、新しい発見、新たに学ぶことが少なくありません。そのなかで、気づかされたこと、教えられたことを、何回かに渡ってご紹介したいと思います。

中小企業にとって「知的財産」とは

 私たちが扱っている「営業秘密」は、知的財産の一つです。
営業秘密の説明をはじめようとすると、「そもそもオレたちは知財がよく分かんないだから、営業秘密なんて興味もないし、もし取り組むとしても先の先」というような反応を示される中小企業の幹部が少なくありません。
また、知的財産をひととおりり学ばれていても、間違った理解をされている方が結構おられます。
 
以下が、よく耳にする「誤解」(の一部)です。
・素晴らしい自分の発明が特許登録された。なにもしなくても他者からライセンス希望が殺到し、大金が転がり込むはずだ。
・一度特許化できれば絶対である。
・展示会出品後でも権利化できる。
・製造・計測技術も、すべて特許で守るべきだ。
・プログラムは、特許権利化できない。
・口頭の秘密保持義務でも安心だ。
・契約を締結すれば、技術流出を防止できる。
・秘密保持契約を締結すれば、相手にすべて打ち明けても安心だ。
・買い手の仕様による特許侵害は免責される。
・従業員の発明は、当然会社のものだ。
 
 これらの「誤解」は、イコール「事業リスク」と考えても良いでしょう。
契約についての思い違いが、多いのも現実です。
とくに、「技術が命」のメーカーでは
■(特許、意匠、商標など知財に関する)権利
■(他者との)契約
■「(営業秘密として守るべき)技術ノウハウ
の三本柱で、経営を考えていかねばなりません。
 
 事業で重責を担う経営幹部のみなさまには、まずこのことに気づいて欲しいと思います。

第二回 アドバイザーの嗜み/小原アドバイザー

キホンは「下から目線」

 私は約二年半前、家電メーカーのサラリーマンから現職に転じました。
 
 そのとき、永年薫陶を受けた会社の大先輩から「新天地ではクチが裂けても『ウチでは…だった』と前職と比較したり、聞かれもしないのに『◯◯電気におりました』などと決して語ってはいけない。それが大人の転職者の嗜みだぞ」と忠告されました。
 
 また、関西淡路大震災後の中小企業復興事業に携わった学生時代の別の先輩からは「人間には『他人の自慢話を聞かされるのは大嫌いだけれど、己の自慢をするのは大好き』という習性がある。会社の相談を受ける仕事は『下から目線』で経営者から本音を引き出すコトに尽きる。アドバイザーが初対面の相手に、真っ先に自分の過去(その手の話は、とかく盛ってしまいがち)を得意気に語るのはタブーだよ」とも言われました。
 
 さらに、INPITに来てから企業支援業務の先輩から、過去の実務経験に基づいたアドバイスをするときに「その情報は、いちばん新しくてもお前がアドバイザーに転じた2~3年前の『古いもの』であることを忘れず、つねに最新情報にアップデートする努力を怠ってはいけない」と助言されました。
 
 中小企業の経営者には即断即決タイプが多く、最初の2~3分の第一印象で、こちらの「人となり」を値踏みされてしまうコトが多い様に感じます。
 
 「前職で私は…」とやってしまいそうな自分を抑えながら、相談企業の実情をポイントを逃さず正確に引き出すために、常にアンテナを拡げ、自己研鑽し、過去の経験を土台にした「最新の自分」で語れるよう、先輩諸氏の教えを肝に銘じ、日々活動しています。

第三回 「秘密を守る」とは/小原アドバイザー

愛社精神の落とし穴

日本の企業では、新入社員から経営トップまで「愛社精神」が旺盛です。
 
<営業マンは>
・展示会での説明/営業プレゼン/取引先への売り込み
<技術者は>
・展示会での専門的な質問への積極的対応/営業に同行した技術プレゼン/仕入れ先指導・外注指導
<経営トップは>
・トップセールス/表敬訪問時の土産話/社外への苦労話・自慢話披露
<工場スタッフは>
・取引先の監査・立ち入り/工場見学者の受け入れ
 
など、日常的にさまざまな他者(社)との接触の機会があります。
そういった場面で、自社の売り込みや、技術アピールに熱心なあまり、前のめりになって「必要以上に」説明してしまう傾向があります。
しかも、従業員それぞれが、その場の自己判断で「秘密保持契約を交わさず」に、だいじな企業情報を開示してしまうようなことが起こりがちです。秘密情報は一度流出してしまうと、取り戻すことは、まず不可能です。
 
最近、自社ホームページ上で動画を用いて技術力をアピールしようとされている企業様が多いように思います。その動画を拝見すると、ほとんどの場合「出し過ぎ」の傾向があります。中には、背景にノウハウの塊である虎の子の内製化装置や冶工具が写っているような 「頭隠して尻隠さず」 のケースもありました。
 
企業人として「会社を思う気持ち」は、とても尊いものです。愛社精神が日本の産業を支えてきたことも事実です。
しかし、上に挙げたさまざまな例は、「情報という無形資産に関して脇が甘い」という日本人の特質もさることながら、「目先のことばかりを意識するあまり、(営業・技術情報が流出している意識をまったく持たずに、長い目でみると)会社に重大な損害を与えているという認識の欠如」から起きるものです。
 
どの会社にも、そして新入社員から社長・会長に至るどの階層の従業員にも内在するこれらの悪弊を払拭するためにも、「営業秘密管理体制の構築」が必要なのです。
 
 

第四回 講師の心得/小原アドバイザー

~ 伝わる講演をめざして 「つかみ」と「時間管理」~

私たちアドバイザーの重要な業務の一つに、全国各地での講演があります。 
企業の社内研修からINPIT主催セミナーまで、参加者は数人~数百人と規模も様々です。
 
現在、毎夕(事務方を含めた)窓口メンバー全員が集まって、侃侃諤諤の議論をしながら、新年度用テキストの改訂作業を進めています。   
 
場数を踏んでは来たものの、どんな講演でも毎回緊張の連続です。
 
私はお話をする際に、以下のことを心がけています。

<その1> 「出だし」が勝負

必ず冒頭に、開催地、参加企業などに相応しい「つかみの話題」を用意します。
 
「どんな奴が、どんな話をするんだろう」と、会場に来られた皆さんの目と耳が私の一挙手一投足に集中する時ですから、開始早々「私は、前職で重要な知財ミッションを幅広く担当して来ました」などと大風呂敷を広げたりしたら即アウト、むしろ失敗談などの方が、参加者の心をグッと惹きつけられるように感じます。
 
とは言っても「スベって空振り」も少なからずあり、エスプリの効いストライクゾ-ンの題材を求め、様々な資料を渉猟しています。

<その2> 時間厳守

どんなに良い話ができても、与えられた時間内に話を収められなければ、講師失格です。
とくに主催者(企画側スタッフ)は、終了時間をひじょうに気にされます。
 
自らに「1分オーバーで20点減点」を課しています。
ですから、大甘の自己評価で「だいたい80点の出来だったな」と感じたときでも、4分超過したら結果は0点です。
 
緊張が緩むと、時間が延びがちになります。
あらかじめ章ごとにラップタイムを設定しておいて、時計を横目で見ながら「尺に合わせる」よう話をしています。

<その3> できるだけ平易に

ともするとスペシャリストを気取って「専門用語で煙にまく」ような愚を犯しがちです。
 
私たちの講演は、初学者をターゲットにしていますし、総務部門など非知財職の参加者も必ずおられます。
 
「〇〇を担保する」「権利化/秘匿化の判断には、まず発明の顕現性を考慮すべき」「従業員の予見可能性を…」「図利(とり)加害目的で…」「善意無重過失で取得した場合…」等々、聞いただけでは頭に漢字と意味が浮かばない業界用語や役所言葉を連発し、聴講者を「置いてけぼり」にするなど、不親切の極みでしょう。話しぶりまでが独善的になってしまいそうです。
 
口頭の説明では「専門(業界)用語は極力避け、可能な限りやさしく」を心がけています。

<その4>「伝わったか」の確認

テキストや話し方で、どんなに「伝える」努力や工夫をしても、結果、それが聞き手に伝わっていなければ意味がありません。
 
講演・研修は、たいてい壇上から語りかけますから「上から目線」「一方的」になりがちなシチュエーションでもあり、尚更です。
 
毎回、講演後にアンケート記入等で会場に残っておられる受講者を捕まえて
・講義で分かりにくかった項目
・テキストの要改善箇所
などについて具体的に指摘してもらい、その内容を次回に反映させるようにしています。
 
趣味で、テケテケと下手なエレキギターを弾いています。
バンド活動では、演奏の巧拙とは別次元で「こいつ練習して来なかったな」は、他のメンバーにスグに見破られます。
 
「1日練習しなければ自分に分かる。2日練習しなければ批評家に分かる。3日練習しなければ聴衆に分かる」
教育者、著述家でもあるフランスの高名なピアニストの言葉です。
 
胸を張って「どんな聞き手にも、じゅうぶん納得してもらえる内容だった」というレベルに達していると言い切れる自信は、まだありません。
 
「まあ、この程度で良いか」という妥協、手前味噌の評価がマンネリ化を招きそうです。
 
昨日より今日、今日より明日と一つずつでも改良を加えながら、より「伝わる講演」にすべく、日々工夫を重ねています。

この記事に関するお問合わせ先

知財戦略部 営業秘密管理担当

電話
(代表)03-3581-1101 内線3841
Fax
03-3502-8916

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