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鉛フリーはんだ業界トップクラスの企業に聞く!知財の活用方法

「知的財産」という言葉は、聞いたことはあるし事業に活用出来るかもしれないと思うものの、開発や研究、そして実際に出願等に携わっている人以外には、なかなかにとっつきにくいものかもしれない。
関西の特許出願件数は首都圏に次ぐ規模を占め、その業種も様々である。また多くの国公私立大学でのライフサイエンスをはじめとする先端分野の研究も活発である。
そんな関西で知財活動を積極的に行っているパワーあふれる中小企業のトップは、どのように知財をとらえ、活用しているのか。またその活動の動機付けはどこにあるのか。INPIT理事長が中小企業トップのその動力源について直接取材する。
写真1
取材日 2020年10月23日(金)
株式会社日本スペリア社(以下、日本スペリア社)
 代表取締役社長 西村 哲郎 さま(写真右)
 知財部 部長  西田 光宏 さま

独立行政法人工業所有権情報・研修館(以下、INPIT)
 理事長    久保 浩三(写真左)
 近畿統括本部 大上 ひかる

きっかけは25年前

INPIT:まずは御社と知財の関わりについて教えて頂けますか。

日本スペリア社:はじめに「日本スペリア社」についてご説明しますと、この社名は55年前に父が創業したときにつけました。もともとアメリカのスペリアフラックス社の製品を販売していたことに由来しています。その後、ろう付け材料(リン銅ろう等)も輸入販売を始めました。私自身が金属工学科の出身と言うこともあってはんだ材料を開発したのが知財との関わりの始まりです。新規のはんだ材料はノウハウの塊にも関わらず、そもそも「特許を取る」という認識がありませんでした。しかしながら当時はアメリカの大学が特許を多く取っている状況で、我々が同じような材料を作って売ろうとすると特許に抵触してしまうという問題が起こります。これをどうにか改善しようという動きが活発になったのが25年程前の話になります。そこから今に至るまでかなり改善はされたと思いますが、まだまだ知財に対して認識が甘いところがあるように思いますし、これはかなりのチャンスロスですよね。この件について私の経験になりますが、たまたまアメリカの大学との研究において当社とのライセンスに繋がり、結果日本国内で独占的な立場を得ることが出来たという事がありました。知財を活かすことが出来なければこのようなことは不可能だったわけです。

「The proof is in the name」の精神

INPIT:ある意味、日本国内の特許モデルケースのようなものになったということですね。

日本スペリア社:その通りです。ただ、大変なこともたくさんありました。国内で日本スペリア社だけが取扱いが可能というのは業界的には困るところもあります。実際、経済産業局へ当社の活動について何度か説明をしなければなりませんでした。そんな中でも自社では新たな研究開発が生まれていきますから、今までの経験を踏まえて特許や商標を活用していかなければいけないとういう思いで事業運営を行っておりました。当社はものづくりをしている主たる国には全て出願しようというスタンスでしたが、当時はPCT出願が始まった最初の頃、今よりもっと加盟国が少なかった時代だったので、色々と大変でした。ただ、その努力の結果、おかげさまで当社に想定以上の引き合いをいただきましたし、先述の知財活動を継続していますと「日本スペリア社の製品を使いたい」というお客様がたくさんいらっしゃって、実際売り上げにも反映されています。先日ニュースウィーク紙に取り上げられた際に「The proof is in the name(名は体を表す)」と表現しましたが、その言葉の通り、日本スペリア社の名前を冠した物についてはブランドに責任を持って製品をお届けしたいと思っています。

INPIT:御社が知財と一体になって経営を行ってきたのがよく分かります。なかなかここまで造詣の深い企業も多くはないと思うのですが、西村社長が発明者であったところが大きかったのでしょうか。

日本スペリア社:そうですね。企業のトップは売上や事業系の話ばかりに終始することが多く、知財というと総務や経理というような職務の一種のように思いがちなのかもしれません。しかし私は、例えば特許侵害はBCPの最重要課題にきても良いというくらいの考えを持っています。さらに、これだけネットが主流になった世の中では益々知財の重要性が高まっているように感じます。「公明正大」におこなうこと、そしてそのオリジナリティの価値を認めて頂くのが顧客保護にもなり、未来の繁栄に繋がっていくと思います。

経営戦略に知財という視点を加える

INPIT:社長自らがここまで知財に理解があって積極的であると安心ですね。知財活動というと継続性が重要だと思うのですが、当方の支援依頼は一時的なものが多くあります。そのあたりはいかがお考えでしょうか。

日本スペリア社:継続性に繋がらないのは社内の研究開発自体が止まっているからかもしれません。作って売ることだけに執着してしまい、知財という目線を失っているのだと思います。実際、新たなアイデアや取引に「知財」は欠かせないですね。また、他社からの侵害をいかに回避するかという事にも知財は重要な視点なのですが、そのあたりも疎かになっているのではないでしょうか。我々もそういったトラブルは多々経験しております。特に近年だと海外展開を行う際には知財を身につけておかないと難しいです。

INPIT:知財をしっかり押さえておくことで、足下から瓦解することを防いでいるのですね。

日本スペリア社:そうですね。あとはいかに知財を活用した経営戦略を練るかだと思います。例えばBtoBの商品で当社の規模でここまで商標を出しているのはそう多くはないと思うのですが、あくまでやみくもにではなく、どこからどこまで押さえないといけないかを常に考えて、作戦を立てています。また新たなアイデアの保護という点では、プラスチックゴミを減らす目的で開発した当社のボビンレスはんだが、実は環境問題の他にも、リサイクル処分費用の削減、他社による製品の複製・偽造の阻止などに役立ち、想定以上に様々な恩恵を得ることが出来ました。もちろん特許や意匠を取っていましたが、このような大変良いアイデアを知財で守ることは本当に大きな意味を持っていると思います。

知財においても広い視野を持つことが重要

INPIT:具体的な例で大変面白いお話ですね。知財というと最終的には人材育成が大きな課題となってくると思うのですが、どんな人材・どんな育成支援があれば良いとお考えでしょうか。

日本スペリア社:やはり業界毎に専門性があるので、人材はそれをきちんと理解した上で同じ目線でコミュニケーションがとれる方が良いです。業界知識の土台があって、さらにそこから知財育成が出来ると非常に心強いですね。また、知財の中でも例えば「権利化だけ」といった各論ではなく、事業と知財がどう関わり合っているのかというような広い視野を持ち、包括的な知識を身につけてほしいと思っています。これにはやはり社内研修だけではなく、外部の講師や勉強会といった外の刺激が重要になってくるとは思います。あとは、他者の特許権を侵害していないかどうか、それを回避する方法をテーマにした勉強会などあったら面白いですね。

INPIT:我々もそのような機会を提供しお役立てできるように尽力します。

日本スペリア社:先ほども申し上げましたとおり、知財もBCPの頭にくる内容だと私は考えていますので、さらなる希望を言うと大学の先生や学長室ともっと知財系の話をしていって欲しいです。海外と日本の研究者の知財に対する認識が違いすぎると私は感じているので、本当にもったいないと思います。新しいアイデアがどんどん生まれて、そして儲かっていく知財の活用を、当社は勿論、日本全体で推し進められると良いですね。
写真2
▲産業財産権制度125周年記念式典(経済産業省/特許庁、平成22年(2010年)10月18日(月))において、なんと日本スペリア社様・久保理事長ともに出席していたことが対談中に判明しました。2人がそれぞれの立場で知財に尽力してきたからこそ、10年を経てこのように対談が実現したのかもしれません。

(文・写真=大上ひかる )

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