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最先端のパワーエレクトロニクス企業が目指す知財マインドの醸成

「知的財産」という言葉は、聞いたことはあるし事業に活用出来るかもしれないと思うものの、開発や研究、そして実際に出願等に携わっている人以外には、なかなかにとっつきにくいものかもしれない。
関西の特許出願件数は首都圏に次ぐ規模を占め、その業種も様々である。また多くの国公私立大学でのライフサイエンスをはじめとする先端分野の研究も活発である。
そんな関西で知財活動を積極的に行っているパワーあふれる中小企業のトップは、どのように知財をとらえ、活用しているのか。またその活動の動機付けはどこにあるのか。INPIT理事長が中小企業トップのその動力源について直接取材する。
写真1
取材日 2021年3月19日(金)
株式会社三社電機製作所(以下、三社電機)
 代表取締役社長             𠮷村 元さま(写真左)
 執行役員 技術本部 本部長       佐藤 勝己さま
 経営企画本部 広報部 部長代理     関屋 啓子さま
 技術本部 技術管理部 特許技術管理課  江口 文子さま

独立行政法人工業所有権情報・研修館(以下、INPIT)
 理事長 久保 浩三(写真右)
 近畿統括本部 大上 ひかる

二本の柱

INPIT:社長はかつて特許関連のお仕事をされていたと伺いました。知的財産権への意識が高い社長に、ぜひ貴社の事業や知財に関する人材育成についてお話し頂きたいと思います。

三社電機:弊社の創業は1933年、おかげさまで今年創業88年を迎えました。弊社は大きく2つの柱で事業を行っており、一つは半導体、なかでもパワー半導体という、大きなエネルギーを制御するものを製造販売しております。もう一つは電源機器事業です。大型の電源で、太陽光発電のパワーコンディショナ等が分かりやすいでしょうか。また、表面処理やメッキ関係の電源シェアでは国内トップクラスと自負しています。全体としましては、パワー半導体事業約30%、電源機器事業約70%の割合で、年間200~250億円の売上げとなっています。弊社は法律上では大企業ではありますが、実態は中堅企業として、まだまだ伸びしろは大きいものと考えています。  体制としては技術本部で開発全体を行い、工場に設計部隊を置いて、お客様からの個別のリクエスト件名に合わせて適宜モディファイするという形をとっております。
 今後は創業100周年を見据えて、環境問題のソリューションとして燃料電池、蓄電池用のパワーコンディショナ等に対応した様々な新エネルギー対応関連ビジネスを推進していく方向です。

海外進出とノウハウ管理

INPIT:貴社の製品はノウハウの塊といえると思うのですが、どのように保護・管理を行っているのでしょうか?例えば中小企業からの相談の中には、海外に製品が出回ってしまうとすぐに酷似したものを安価で作られてしまう、加えて最初は性能面で日本製が優位に立っていたものの、最近はレベルも上がってきて困っている・・・といったものが度々見受けられます。

三社電機:私も昔は回路屋だったのでよく理解できるのですが、電源製品は回路図で書くとシンプルな機能の集まりである反面、実は色んなものが組み込まれていて、まさにノウハウの塊です。知財で全部押さえてしまうのは理想ではありますが、実際大型の電源機器は非常に要素が多いので、知財でカバーするにも限度があります。なので、やはりノウハウ管理の部分で工夫を重ねて行くことが重要だと考えています。一方、半導体については電源機器よりも構成要素が比較的少なく、また海外シェアも多く占めているので、知財できちんと守りたいですね。
 ノウハウ管理で言うともう一つ、海外でのノウハウ流出も懸念しています。いかに海外の現地企業を通じての、意図しない技術の流出を防止するための対策をしっかり取るかが今後の課題だと感じています。

INPIT:社長のご指摘の通り、90年代以降東南アジアや韓国、台湾へ行く日本人技術者が増加し、技術の流出が重要な問題となりました。国内で特許出願することにより技術情報がオープンになったところで、海外各国での特許申請が現実的に対応不可となれば、中小企業にとっては技術のただ取りをされてしまうわけですから・・・。我々にとっても日本の技術をいかに守るかというのが必須課題となって、日々ノウハウ管理の重要性を訴えております。

知財に対する社内意識強化へのステップ

三社電機:弊社の体制として、お客様からのリクエストにお応えして製品を出すとお話しいたしました。その中で私が感じているのは、技術者の気質として、難しい課題に燃えて開発をするけれど、その成果の部分を知財として守る、その感覚が少し足りない・・・という事です。製品をお客様に納めたら大きな喜びを感じるのは当然ですが、会社としての財産でもあるという感覚をもっと強く持ってほしいと思っております。弊社もまだまだ規模は小さい会社ですが、上場も果たしておりますので、自分たちで体制を整えていかないといけない。しかしながら知財を始め、技術関係の契約等に特化した専門部隊を設置するにはリソースが不足している・・・というのはどこの中小企業も悩みどころだと思うので、INPITをはじめとする政府支援等も頼りにさせて頂きつつ、しっかりとした体制構築を図っていかなければと考えております。

INPIT:中小企業でよく見られる、知財に関して担当者が1人のみ、または他業務と兼務されているといった状況では、意識の醸成や相談をする機会を得られない事が多く、結局は弁護士や弁理士に頼るという手段になるわけですね。ただそれには費用もかかりますし、社長のおっしゃる社員の意識向上に繋がるかと言われれば、疑問点もあります。

三社電機:私の今一番の悩みは、技術部門全体のマインドを上げたい、知財はもちろんリーガルマインドを技術者一人ひとりが高く持ってほしいという事です。元来技術をアピールする会社なので、技術者全体のマインドを底上げするのが体制的には必要ですよね。技術者各人が創出した会社の知財をどのように守るのかと常に意識する事は極めて重要で、またそれをまとめるのが社内の知財担当とすれば、少数精鋭で知財戦略が構築できると考えます。 現在、技術者の「権利化して活用」という発想がまだまだ低いので、例えば「この商品のこの部分が強みだから特許を出して独占しよう」とか「仮に他社で良い技術があれば、そことクロスライセンスを結ぼう」とか、そういうアグレッシブな発想が技術者側から知財担当者へ出てくるようになればと思います。

INPIT:環境関連分野・IT関連分野・自動車産業分野が成長している今、電源関連市場は大いに期待できますから、貴社にとってまさに知財意識強化のタイミングといえるかもしれませんね。

三社電機:トップダウンでは人も育ちませんし、技術全体の底上げにもなりません。よく言われる技術戦略・経営戦略・知財戦略の三位一体と申しますか、それぞれが知財の意識を身につけていくことが会社全体を強くすることに繋がると思います。弊社はお客様からの課題を頂いて製品を作るという、そのスタイルの歴史が長いので、現場で自ら課題をみつけてプランニングしていくという力は将来の成長に必ず役立つと確信しています。
 また、同時に彼らには「特許になるかならないか」視点ではなく、ぜひ「会社にとってこの技術は必要か不要か」ということを意識して頑張ってもらいたいですね。その技術を一番理解しているのは技術者本人ですし、会社にとって役立つ技術であるのなら、それをどのように守るかを模索するのが、我々経営陣や知財担当の人間の仕事ですから。むしろ知財意識の高い技術者があげてきたものであれば、知財担当者は何が何でも権利化してやろうという気持ちになりますよね。
 技術者自身が特許化は難しいだろうと思っているものでも、知財目線でみると意外と発想の部分で新しいものがあり、解決手段を見いだせることも多くあるので、まずは先行特許を当たり前と思わず、良いアイデアをたくさんあげられる環境を整えることが大切だと感じます。
写真2

支援機関に求めるもの

INPIT:今後、企業にとって最も必要な知財戦略として、われわれがご期待ご要望にお応えできることがありましたらぜひお聞かせ下さい。

三社電機:我々の規模の中堅企業ですと、海外展開・グローバル進出における知財戦略については、規模的に人員配置の面も含めて限界があります。リソース不足の補強という意味で、今後とも大いにご指導・ご支援下さい。また、INPITで提供しているIP-ePlatなどeラーニングはぜひ利用したいと思っていますし、例えば知財担当者でないとなかなか実感することが出来ないようなヒヤリハットの実経験を紹介・共有頂くというのも面白いのではないでしょうか。このような形でご指導頂けるようでしたら、ぜひ技術者をどんどん参加させたいと思います。

INPIT:今後、この知財における人材育成にもっともっと力を入れていきたいと思っておりますので、IP-ePlat等のeラーニングもどんどんご利用下さい。また、セミナーや研修の内容も、皆様のご要望にお応えできるよう、ブラッシュアップしていきます。 これからも皆様の色々なご要望を伺って、知財の人材育成におけるより良いプラットフォームの構築に向け、皆様のお知恵を拝借できたらと思っております。本日は、様々な素晴らしいお話を聞かせて頂き本当にありがとうございました。

(文・写真=大上ひかる)

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