<有限会社 土井茂商店>商標を武器に地元の魅力を全国発信

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商品にオリジナルカラーを・・・差別化のヒントは「商標」

土井茂商店 写真1

 創業から60余年を迎えた「土井茂商店」。創業者である先代社長の時から、水産物卸業を営んでいる。当初は塩干品の仲卸業が中心で、従業員は7名という小所帯ながら、地元和歌山の水産加工品を長年に渡り扱ってきた。

 そんな土井茂商店が小売業を開始したのは、現在の土井敏生社長の代になった10年ほど前から。取引先の量販店から、「こんな商品があればいいのに」という声を耳にすることが多くあった。自社の独自色を出したいと常々思っていた土井社長は、これをきっかけに新製品の開発に乗り出し、試行錯誤の結果、「紀州梅酢干し」を生み出した。干物作りで最も主流な塩水干しではなく、南高梅で梅干しを作る際に出る梅酢を用いて、紀淡海峡で取れた旬の魚を漬け込んでいる。

 自社の独自性にこだわり続けた土井社長は、「紀州梅酢干し」の完成にとどまらず、更に他社と差別化をするにはどうしたらよいのかと考えていた。そんな中、かねてより付き合いのあった和歌山商工会議所に相談した際、商標の取得と知財総合支援窓口を紹介されたという。こうして、土井社長の商標権利化へ向けた取り組みが始まった。

支援担当者と二人三脚で商標取得へ

土井茂商店 写真2

 「商標」という言葉自体知らない状態からのスタートであったが、社長の事業に対する人一倍の熱意により、初めての知財活動にもためらいなく足を踏み出せた。知財総合支援窓口の湯川支援担当者から、近隣企業の取得例も参考にしながら、商標について、その制度や取得のメリットなど基本的な説明を受け、商標についての具体的なイメージを膨らませることができた。

 こだわりのロゴマークは、商工会議所から紹介されたデザイナーと半年ほどの時間をかけて作り上げた。地元の財産を目一杯活用した商品を、高品質でお客様に提供するという、社長が貫く信念を、デザイナーと話し合いを重ねながら形にしていった。梅と海をモチーフにしており、主力商品である梅酢干しはもちろん、地元の和歌山を一目でイメージできるようなデザインだ。

 ロゴマークの完成後は、湯川支援担当者からの助言を受けながら、商標の出願から権利取得までを土井社長が自ら行った。取得した登録商標(商標登録5858425号)は、大手デパートに納入する商品に貼り付けたり、自社ネットショップのトップページに表示させたりするなど、積極的に活用している。登録商標はデザインがかわいいとお客様からも大好評。居並ぶ魚介・海産物の中でも、ひときわ注目を集めやすい。また、商品に貼り付けるとワンランク上の品質に見てもらえるため、取引先からの引き合いも増えている。

商標を武器に、ふるさとの魅力の詰まった商品を全国発信

土井茂商店 写真3

 「干物は毎日食べるようなものではない。だからこそ、食べてもらう時にちゃんと満足してもらえるものを作りたい。」地元の良い素材を使って高品質な商品を作ることが土井社長の信条だ。商標が権利化できた今でも、事業の中で悩み事があれば、湯川支援担当者に相談をしに知財総合支援窓口を訪れている。

 拡販活動を強化するため、二人で「よろず支援拠点」も訪れた。よろず支援拠点コーディネーターの提案により、「紀州梅酢干し」は、平成28年から和歌山市ふるさと納税に対する返礼品として登録され、地元の特産品を全国へ発信する取り組みもスタートした。和歌山の魅力を日本中に広げることを目指しており、ちりめんや丸干しといった、他の魚介特産品とのコラボレーションにも取り組んでいる。

 登録商標を活用することにより、商品のイメージアップや注目度の向上に加えて、販売先や連携先も大きく拡がった。さらに、土井社長はその先を見据えており、手作業で行っている「紀州梅酢干し」加工の機械化を考えている。和歌山の魅力をより多くの人に届けられるように事業を展開していくことが土井社長の目標であり、自身の思いが詰まった商標とともに、今後も歩みを進めていく。