社内機密情報の管理と特許管理サポートによって、売り上げ上昇!!

有限会社比土工業(三重県)
窓口名:三重県知財総合支援窓口
業種:製造業
従業員数:20名以下

会社概要

有限会社比土工業
取締役会長  :山本 雅章
住 所    :三重県伊賀市菖蒲池446-1

 三重県伊賀市で溶鋼用計測機器に使用される耐熱保護管を製造しているメーカー。環境に優しい天然素材である珪藻土を保護管に使用する技術を特許として登録し、溶融した鉄・鋼の温度を正確に、かつ、長時間安定して測定するために不可欠な重要部品として売り出している。

相談のきっかけから課題抽出まで

製鉄・製鋼現場での事故を減らす「HIDO NON SPLASH」 誕生

比土工業 写真1  三重県伊賀市で1988年から耐熱保護管を製造している有限会社比土工業。我が国唯一の超耐火性能を持つ珪藻土を用いた保護管メーカーとして、これまで25年以上にわたって安価で高品質な製品を安定的に供給し、国内外の産業発展に寄与してきた。その取締役会長の山本氏は、同じく耐熱保護管の製造を行っていた父から学び、保護管の製造を始め、製鉄・製鋼の現場で多発する事故を減らすよう、日々製品開発に取り組んでいる。
 一般に金属の溶製過程においては、金属溶湯の温度測定、成分分析のために、補償導線に接続した熱電対や試料採取容器とその保持具を溶湯中に浸漬する必要がある。また、そのような中で、使用する補償導線、試料採取容器等を高温溶湯から保護するための保護管が必要とされている。
 そのための保護管として、クラフト紙等を円筒状に巻いた紙管が現在でも採用されていが、紙管は高温溶湯に浸漬した際に、それに含まれる水分や有機成分が急激に気化して溶湯を飛散させるスプラッシュを発生させるため安全性に難があった。
 こうした問題の解決策として、紙管にアスベストやセラミック繊維等、無機質耐火材を外装する技術が開発されたものの、無機質バインダーは耐火性が高い反面、接着力が弱いため、それを使用した紙管外装材は使用中に脱落することがあり、これもまた安全性に難があった。
 そこで山本氏は、紙管の外周面に珪藻土を結合させた耐火材を外装し、乾燥させる耐熱保護紙管を発明。こうして「HIDO NON SPLASH」が誕生した。この技術を発明した当時、山本氏は父から「この技術は絶対に特許出願をした方が良い」と薦められたという。

自社製品に類似した模倣品により廃業の危機に

 「HIDO NON SPLASH」に関する特許を取得したものの、その後、模倣品によって受注が急減し、急速に業績が悪化。廃業の危機に陥ってしまう。そのような状況の中で、知財を活かして業績回復に繋げられないかと、金融機関からの紹介によって出会ったのが、INPIT三重県知財総合支援窓口の村上支援担当者であった。村上支援担当者は経営再建支援のため、特許を侵害していると思われる模倣品への対応について相談支援を行うとともに、三重県産業支援センターの関係者と連携した上で、様々な助成制度を紹介。さらに、専門家である弁護士を紹介し、特許を侵害しているとみられる製品が輸入されている事態への対応方策について、対応を進めていった。

支援の成果

社内機密情報の管理と特許管理サポートによって、売り上げ上昇!!

比土工業 写真2  模倣品被害により廃業の危機まで陥った比土工業であったが、窓口担当者、専門家の助言をもとに、模倣品対策を実施。それによって、大手の顧客が模倣品から、特許を取得している比土工業の製品に置き換えてくれたことが功を奏し、着実に業績が回復。特許取得技術であることが、顧客からの信用、理解を得ることに繋がった。結果として、営業利益は銀行と設定した再建に向けた目標利益よりも高い利益を上げることになり、廃業の危機を脱却。環境規制で耐熱性セラミックファイバー(RCF)の使用が出来なくなったことに伴い、自社のRCFを使用しない特許製品について、特許の効果により、独自の価格設定が出来るようになったことも業績回復の理由の一つだったという。
  しかし、順調に業績が回復した同社であったが、知財の課題は身近に潜んでおり、その後、新技術の開発に当たっていた従業員からの報告が円滑にされなくなったことによって特許出願手続きが遅れてしまったり、大手メーカーから同社の持つ営業秘密について探りを入れられたりしてしまう等、新たな課題が生じてしまった。不安になった山本氏は改めて村上支援担当者へ相談を依頼。村上支援担当者から助言、セミナーの案内等、引き続き支援を受けることによって、同社では職務発明制度及び機密管理について盛り込んだ就業規則を施行するまでに至り、社内体制の充実化に繋がった。

今後の事業拡大に向けて

比土工業 写真3 同社は、2019年にも溶融金属と接触する設備や部材の表面に形成される溶融金属付着防止用・高温化防止用の被覆材、および、この被覆材を備えた耐熱部材に関する特許(特許第6544606号)を新たに取得。保護管に加えて、その周辺の顧客ニーズに応えるために開発してきた計装システム及び機器、製鋼プロセスにおいて飛び散るスラグや溶けた金属から機器、設備を保護する耐火塗料などの事業へも進出を検討しており、製鉄・製鋼業界への更なる事業展開が見込まれる。知財総合支援窓口やINPITとしても知財面での支援を継続的に実施し、同社の成長と製鉄・製鋼業界の発展に貢献して参りたい。