霧島から世界へ!
~削りを極めた技術集団 独自のカーブカット工法で医療分野への参入~

キリシマ精工株式会社
窓口名:鹿児島県窓口
業種:精密金属加工
従業員数:50名以上

会社概要

キリシマ精工株式会社
代表者  :西重 保
住 所  :鹿児島県霧島市国分川原918-7
 
キリシマ 写真1

 霧島市は、薩摩半島、大隅半島の鹿児島県中央部に位置する市で、鹿児島県2番目の人口規模を有する市であり、又、鹿児島空港、九州自動車道その他の交通手段が発達しているため、大手のハイテク産業メーカーが発展し、周辺地域の中核的役割を担っている。その中で、同社は超精密金属加工(光通信、半導体、医療、宇宙・航空、その他)として難削材、微細加工を得意とし、多種多様な部材をハイテク産業メーカーに納入している。

相談のきっかけから課題抽出まで

 西重社長はもともとこの地で技術力のあった企業に勤務していたが、その会社が不況の波に押され倒産。難削材の加工技術でコストも高く新規参入の少ない分野であったため、かつての取引先よりその技術力を惜しまれ工場建設と従業員の再雇用を条件に起業。当時は下請け中心であったが、社員同士で技術を磨き、超精密加工を得意とする企業として認められるようになりたいという思いがあった。
 ちょうどその頃鹿児島県知財総合支援窓口の濱石氏が同社を訪問したことが、窓口活用のきっかけとなる。当初知財に関する認識は同社内では希薄であったが、相談員との意見交換を重ねていった西重社長は、同社独自の切削加工方法「カーブカット工法」を含めた技術ノウハウの流出保護が、自社の課題であることに気付いた。
 後日、INPIT知財戦略アドバイザーを講師として招き、営業秘密に関するセミナーを開催し、同社内におけるノウハウを含めた知財管理体制の認識強化を図った。相談員は「展示会で自社技術をPRするためには、まず自社の知財管理体制の構築が必要。展示会には新たな可能性と共に、情報や技術流出の危険性も隠れている」と説く。
 
キリシマ 写真2 ノウハウ管理について十分な知識をつけた上で、同社技術の高さをPRするため、西重社長は展示会への出展を決意(右写真:カーブカット工法で製作した真鍮ピラミッドを展示)。
 
 この展示会への出展が会社の未来を変えることになる。ある歯科医師から矯正器具の試作品作成を打診されたのである。同社技術には絶対の自信を持っている西重社長自ら本案件を持ち帰り、「君たちの技術力なら出来ないことはない!どうすればできるか考えよう!」と社員達のモチベーションを高め、何度も失敗を重ねながらも完成にこぎつける。
 従来の矯正器具に比べて、突起が無く、ラウンド形状の為、舌感も良く、滑舌への影響も少なく、食物残渣が少ない本器具は、「ZERO-SYSTEM」と名付けられ、同社と前記歯科医師、歯科医療機器メーカーと共同で特許出願をし、日本人に比べて歯の見た目にこだわる欧米でも権利化を目指している。

支援の成果

独自の精密加工技術で新事業分野への進出!

 現在はメーカーや販売代理店からの受注が売上の大半を占めているが、経営の安定性に欠くことを問題視していたところ。現行の体制を見直すために、2019年10月に大手メーカーから管理部長を招聘した。企業として10年後、20年後どうあるべきかを日々考えている。結果、前記のとおり自社製品の立ち上げを目指して、展示会へ出展。矯正器具の販売は新たな売上の柱としたく、医療機器製造業の許可も受け、本格的に医療業界への参入を果たした。これまでのB to Bビジネスから、B to Cビジネスを視野に入れて舵を切り始めた。
 独自の製品を作っていく中で、知財の権利化、ノウハウ管理等について、知財総合支援窓口に支援を仰ぎながら実施していきたいと考えている。窓口担当者の伴走支援は、同社の成長のためには必要不可欠であると認識している。

事業拡大に伴う雇用増で地域に貢献!

キリシマ 写真3  同社を2006年、従業員5名で創業。当初は近辺企業に部品を納入して、徐々にその技術力が認められ成長してきた。2018年12月には経済産業省「地域未来牽引企業」に選定された。ここ数年は業績を大きく伸ばし、2019年には売上約5億円、従業員50名を越える企業に成長。
 今後も社員一同、夢を抱ける工場を目指し、持てる知恵・技術を出し合い、努力を惜しまず仕事を通じて社会に貢献していくをモットーに、霧島から世界進出を目指している元気な企業である。