「ネジチョコ」で地域活性化へ ~権利化で生産数3倍に!~

オーエーセンター株式会社
窓口名:福岡県知財総合支援窓口
業種:通信事業・飲食事業
従業員数:50名以上

会社概要

オーエーセンター株式会社
代表者  :吉武 太志
住 所  :福岡県北九州市小倉北区宇佐町2丁目10番1号

 福岡県北九州市内で5店舗のドコモショップを運営し、法人向けに情報通信端末やネットワーク端末、通信回線等の企画・提案から施工・保守までをサービスとして提供している。また、洋菓子店「グランダジュール」でケーキや焼き菓子などの販売も行っている。

相談のきっかけから課題抽出まで

世界遺産登録をきっかけに「ネジチョコ」誕生

オーエーセンター 写真1  福岡県北九州市で多角的な経営を行っているオーエーセンター株式会社。その代表取締役社長である吉武太志氏は、一方で「NPO法人 NORTH NINE」の理事長も務めており、小倉城や市内の公園の施設管理業も行っている。そのような中、2015年に北九州市の「官営八幡製鐵所関連施設」が「明治日本の産業革命遺産」として世界遺産に登録されたことをきっかけに、北九州市を代表するような定番お土産の生産ができないか依頼を受け、お土産品の製造・企画がスタートした。
 北九州市を代表するお土産とは何か、何をモチーフにしたら北九州市のイメージに合致するのか。思いついたのが北九州市の歴史ある鉄鋼業である。試行錯誤を重ねた結果、「鉄」や「ものづくり」のイメージに合致した「ネジチョコ」が誕生した。

産学官連携で「ネジチョコ」製造の自動化に挑戦

 ネジを模した見た目の可愛らしさから、SNSを中心に「ネジチョコ」は広く知られることとなり、それに伴い需要も高まっていった。しかしながら、販売当初は量産体制が整っておらず、全て手作業で製造していたため生産が追いつかない状態であった。また、型からチョコレートを剥がす際に手首をひねるため、従業員が手首を痛めたこともあり、まずは型からチョコレートを取り外す工程を自動化することを決意した。
 工程自動化ロボットの導入に向けて、行政の支援機関や大学、地元メーカーなどと連携・協働して技術課題を解決していった。北九州市を代表するお土産ということで、吉武社長の周りには様々なバックグラウンドを持つ人々が集まり、一丸となって取り組んだという。
 その中でも、北九州産業学術推進機構内のロボット技術センターと特許庁との連携支援においては、技術課題を解決する中でネジの形状に改良点を見いだした。その改良点に技術的な発明要素が発見されたため、権利化できないか同機構内の中小企業センターから紹介を受けたことがきっかけとなり福岡県知財総合支援窓口(以下、窓口。)も「ネジチョコ」プロジェクトに参画することとなった。

支援の成果

権利取得で模倣品対策、自動化で生産量は3倍に!

オーエーセンター 写真2  当初、権利化は難しいと思われていた製造方法の技術であったが、窓口においては支援担当者のほか専門家(弁理士)とも協力して、発明した技術の工夫した点やポイントを整理することで「ねじ型チョコレート及び製造方法」で特許出願を行い、登録に至った(特許第6403915号)。元々、吉武社長は知財意識を持ち、商標権を取得することで模倣品対策を行っていたが、特許権の取得により、更なる模倣品対策を講じることが出来た。また、国内外に販路を拡大していく中でどのように知財戦略を立てていくとよいか、権利化と同時にオープン・クローズ戦略に関する支援を受けたことで、現在も特許・意匠・商標を組み合わせた知財保護に積極的に取り組んでいる。
 その後も各工程での自動化に成功し、手作業していた発売当初から比べると生産量は3倍に拡大。単純作業の自動化を進めることで省人化を図り、少子高齢化による人手不足を解消している。

今後の事業拡大に向けて

オーエーセンター 写真3 現在でも大手企業や有名キャラクターとのコラボレーション等により、SNSからさらに口コミが広がり好評を得ている「ネジチョコ」。国内に留まらず海外からの引き合いも増えてきている。2020年1月に「ネジチョコ」の新工場を設立し、今春を目途に本格的に量産体制に入る予定であり、今後、国内外への更なる展開が見込まれる。海外展開に向けてはすでに国際出願も進めているとのことで、窓口やINPITとしても海外展開における戦略的な知財活用をサポートしてまいりたい。
 また、地域活性化にも積極的な吉武社長は、地元の子供たちが楽しく「ネジチョコ」製造を見学できるよう、新工場は見学ルートなどを意識して建設された。ここでも知財意識が伺われ、クローズ部分は動画撮影禁止を徹底させるなど、営業秘密管理にも余念がない。
 今後の事業拡大に向けて、模倣品への抑止力という観点以外でも、例えばブランディング戦略など知財戦略は重要となってくる。ぜひとも、窓口やINPITとしても知財面からサポートを続け、同社の成長、ひいては北九州市の盛り上がりに寄与してまいりたい。